鼻毛

鼻毛(はなげ)は、鼻腔に生える太く短いのこと。

機能

鼻毛の機能は、から空気呼吸する際に、フィルターのように塵埃(じんあい)や微粒子をからめ取ることで異物が気管支に入り込むことを防ぐほか、鼻呼吸時の吐息に含まれる水蒸気を吸着し、鼻から息を吸い込む際に蒸発させることで、わずかながら呼気の水分を回収する作用がある。

都市部や活火山の近くなど空気が汚染されたところに住むと鼻毛が長くなると言われるが、医学的な根拠はなく、主な原因は老化とされている。

特徴

鼻毛は他の体毛に比べ白髪の発生が早いとされる。その後頭髪陰毛と続き、最後には眉毛に白髪が発生するようになる。

名称

医学的には「びもう」と呼び、外鼻孔から入った最初の部分である鼻前庭に密生している毛を指す。鼻腔、いわゆる鼻の穴は、鼻の周囲の皮膚が直接連続しており、その表面には顔面の皮膚部と同様に皮脂腺毛根が存在する。この毛根から生えるのが鼻毛である。正確には、鼻腔奥部の粘膜表面にも細かな繊毛があり、鼻腔に入った粉塵や鼻粘膜から分泌される粘液を鼻腔の後方へ運搬する役割を担っているが、これは通常「鼻毛」としては認識されていない。また、鼻表面に生える産毛も同様に「鼻毛」とは呼ばれない。鼻腔内部の鼻前庭から生え、鼻孔から露出する可能性のあるものが「鼻毛」と呼ばれているようである。

また、鼻毛は神経の名前にもあり、眼神経が眼窩内に入って三叉に分岐していくその一つが、「鼻毛様体神経」と呼ばれる。「鼻毛様体神経痛」(シャルラン症候群)という、この神経にからむ病気もある。ただし、これは「鼻毛のような神経」ではなく「鼻に存在する、あるいは鼻の感覚に関わる“毛様体神経”」のことで、鼻毛とは関係ない。

「鼻毛」の用法はかなり古く、平安中期の10世紀に編纂された漢和辞書『和名類聚抄』(『和名抄』)(934年成立)には、「鑷」という字に「波奈介沼岐、俗云計沼岐」(ハナゲヌキ、俗にケヌキと云ふ)という注記が見られる。さらに、13世紀の観智院本『類聚名義抄』(『名義抄』)には〈彡偏に鼻〉の字に「ハナケ」の読みがあり、16世紀の『羅葡日辞書』(1595年)にも「Fanague」の表記があるという。

鼻毛抜き

回転式鼻毛カッター

鼻毛は、先述したように、鼻のフィルターの役割を果たしているにも拘らず、鼻孔から露出すると極めて不体裁という理由で、しばしば抜かれる。

鼻毛を抜く際には、親指と人差指により引き抜く行為もあるが、現在では道具を用いて抜いたり切ったりする事が一般的である。かつては毛抜きを用いる事が多かった。「毛抜き」を別名「鼻毛抜き」と呼ぶことは、既に平安時代の『和名抄』や『名義抄』にも見える。しかしながら近年の技術革新により、回転する刃により鼻毛を切除する鼻毛カッターというものが発明され、鼻毛の処理は自動化された。これを鼻の穴に突っ込み、バリカンのごとく鼻毛を一網打尽に削ぎ落とすことが可能になったのである。その他、鼻腔の皮膚を傷つけないよう先端が丸く加工された鼻毛鋏や、鼻毛クリッパーなど様々な鼻毛手入れ用品も商品化されている。

衛生学的観点からは、鼻毛を抜くことは決して奨励されない。鼻の穴は、外部からの塵埃や粘膜からの分泌物が常に滞留し、また体温や湿気によって細菌の絶好の培地でもあるため、むやみに鼻毛を抜くと毛穴に雑菌が入り込み、化膿する危険がある。こうした症状は、医学的には「鼻毛毛嚢の化膿性炎症」などの表現がされる。また、鼻毛が少なくなると呼吸器のフィルターとしての機能低下にもつながる。『抜く』よりも鼻の穴から出てきた鼻毛を鼻毛鋏等で短く切る事が良いとされる。

美容整形や慢性鼻腔炎などの治療で鼻周辺を手術する際には、衛生のために鼻毛が切られる。

鼻毛を抜いた時に涙が出ることがあるが、必ず抜いた鼻の穴の側の目から出る。これは反射を司る蝶形口蓋神経節は左右にあり、局所的な刺激では片方だけしか反応しないからである。

鼻毛カッターを使用した場合、切って残った毛が鼻の粘膜を傷付け鼻血が出る場合がある。

鼻毛のエピソード

  • 夏目漱石は、鼻毛を抜いて原稿用紙に植え込む癖があった。この鼻毛の生えた書き損じの原稿は、漱石の弟子の一人である内田百間が保管していたが、第二次世界大戦中に空襲で焼失してしまったため現存しないという(第三随筆集『無絃琴』所収「漱石遺毛」)。
  • 加賀藩三代目当主の前田利常は、加賀百万石を徳川幕府によるお取り潰しから護るために、自分に謀反の疑いがかけられた時、わざと鼻毛を伸ばしてバカ殿を装った。
  • 国際標準化機構 (ISO) によって、痛みの統一単位「ハナゲ (hanage) 」が制定され、「長さ1センチメートルの鼻毛を鉛直方向に1ニュートンの力で引っ張り、抜いたときに感じる痛み」が「1ハナゲ」と定義された……というチェーンメールがある。これはジョークサイトであるやゆよ記念財団において1995年に発表されたもので、一時期都市伝説めいたチェーンメールとしてネット上に広まった。詳細は痛みの基準はハナゲの項を参照。
  • 日本人のの中には、「鼻毛」という苗字が存在する。
  • 文藝』の編集長だった坂本一亀は膨大な量の生原稿(持込原稿を含む)を読破する超人的な仕事ぶりで知られた。ある作家は、坂本が本当にそれらを読破しているか否か疑ったが、あるとき原稿を調べてみると、ところどころに坂本が読みながら抜いたと思われる鼻毛が挟まっているのを発見し、降参したという。
  • 大阪府議会(平成21年9月定例府議会)において、大阪府庁舎をWTCへ移転する条例案の審議中、ある議員が代表質問で「WTCは換気が悪くて鼻毛が伸びる」と発言し、鼻毛論争が勃発した。

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